米国大統領選の行方:原子力に対するトランプ氏の見解


米国大統領選が過熱する中で、両党候補者のエネルギー問題、特に原子力に対するこれまでのスタンスを調査することで、今後の行方についての価値ある洞察を得ることができる。

共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏は投票記録を持たず、公式な原子力に関する計画もないため、今後同氏がどのような政策を取るのかということについては不確かさが残る。エネルギー政策に最も近い資料で発行済みのものは、2016年5月にノース・ダコタ州でトランプ氏が行った演説の原稿である。一方で、トランプ氏は長年に渡りインタビューや演説で原子力について広く演説を行ってきた。2011年の福島事故を契機に、トランプ氏は原子力の力強い支持者となった。

「私は原子力に賛成だ。非常に強く原子力に賛成する。飛行機が墜落しても人々は飛行機に乗り続ける。自動車事故が発生しても人々は自動車に乗り続ける」と述べた。トランプ氏はテロや地震の懸念を認識してはいるが、「我々には原子力が必要だ。それも速やかに大量の原子力が必要なのだ」と明白に述べた。

トランプ氏は今年のキャンペーンで原子力に反対の異を唱えることはなかったが、数少ないエネルギーに関する演説を見ると、どのように原子力を概念化するかにシフトしたことを示している。ノース・ダコタ州での演説で、トランプ氏は官僚的規制を取り除くことの重要性を強調した。「その結果として、我々はエネルギーの全ての形態を追及することが可能となる。これには再生可能エネルギーや将来の技術を含む。原子力、風力、太陽光を含むが、その他のエネルギー形態を排除するものではない。現在あるその他のエネルギー形態はより良く機能している」。トランプ氏が福島事故後には急成長中の米国天然ガス産業に注目していることと、米国は「サウジアラビアの100倍の天然ガス」を保有するという同氏の主張と相まって、原子力と化石燃料はともにベースロード資源ではあるものの、エネルギー資源の観点から原子力を化石燃料と同一視していないことは明白である。

実際に、トランプ氏が原子力を風力や太陽光と同じ再生可能エネルギーのカテゴリーにグループ化していることは必ずしも明るい話題ではない。共和党候補は特にソーシャルメディアにおいて悪名高い気候変動否定者であり、トランプ氏は最近パリ協定を「取り消す」つもりであると述べた。気候変動の緩和が、高コストの原子力計画を推し進める際に最も広く引き合いに出される主張の一つであることを考えると、この特定の問題に対するトランプ氏のスタンスは期待できるものではない。

トランプ氏はノース・ダコタ州の演説において、政府は勝者または敗者をあてるべきではないと強調した。これは再生可能エネルギーに対する税制上の優遇措置に反対を唱える共和党委員の間で共通するフレーズである。米国の原子力産業が直面する経済的苦境を考慮すると、現時点でこの主張をすることによって特に国内の原子力部門への影響が大きくなる。トランプ氏は原子力に対して明白な異を唱えてはいないが、化石燃料、具体的には天然ガスに対する支持を声高に唱えてきた。トランプ氏が国内探鉱や天然ガスに対して熱意のこもったスタンスを取ることによって、原子力企業が市場に参入する際の障害となる可能性があり、その結果、依然として化石燃料が競争力を保ち、安価なエネルギー源であり続けるのである。

その他検討すべき点は、日米同盟に対するトランプ氏のスタンスとそれが原子力産業に及ぼし得る影響である。これまでトランプ氏は日本との二国間関係を極めて厳しく批判してきた。福島事故直後の余波の中で、トランプ氏は「公平を期して言うならば、日本は長年に渡り我々から金銭を奪い取ってきた以外の何ものでもない。つまり、日本車と日本人の行いのことである」と述べた。また、中国に対しても同様のスタンスを取っており、米中貿易関係を改革することがトランプ氏のキャンペーンの基本理念となっている。国際的な原子力市場における近年のダイナミクスを考慮すると、外交政策だけを取り上げても、トランプ氏のアプローチは原子力産業に大きな影響を及ぼし得る。

最終的には、共和党候補者に期待されているとおり、トランプ氏は直接的に原子力に対して異を唱えないと思われ、原子力に対して強力な支持を示すことで大統領に選出されることが証明されるかもしれない。一方で、公式な政策を打ち出していないことや発言内容を取り消す傾向があることから、現時点でトランプ氏が原子力産業に及ぼし得る影響を正確に示すことは難しい。