論説: 迫りくる中国の津波


下記論説は、ハワード・ベイカー・フォーラムの代表であり、日米円卓会議のオーガナイザーであるスコット・キャンベル氏によるものである。

福島事故を振り返るにつれ、日米円卓会議のメンバーは世界市場構造における新たな変遷にますます懸念を示すようになった。

Forbesの寄稿者ジェームズ・コンカ氏は、核セキュリティ・サミット後の記事で、中国のキャンペーンが世界の原子力市場やその他を変革するだろうと報じた

「中国は世界一の原子力事業者になるために1兆ドル超を割り当てる計画である。2020年までに新規炉を40基建設し、2030年までにさらに100基、2050年までに200基を建設する計画だ。新たな5カ年計画では、国家でこの野心的な計画を推し進めようとしている」

驚くべき数である。

一つの段落で、コンカ氏は世界の原子力産業界を核心から揺るがすことになるこれまでとは全く異なった種類の津波について概要を述べた。

最近の日米円卓会議にて、左から伊藤忠商事(株)阿部俊之氏、経済産業省鬼塚貴子氏、スコット・キャンベル氏

最近の日米円卓会議にて、左から伊藤忠商事(株)阿部俊之氏、経済産業省鬼塚貴子氏、スコット・キャンベル氏

中国がこの数字を実現できたならば、1970年代にOPECが台頭して以来の天然資源における力関係に大きな再編を促し、産業界に歴史的な変革をもたらすほどの影響を与えることとなるであろう。その当時からエネルギー業界に従事してきた者は、石油による富や権力の変化が世界経済に及ぼした深い影響力とそれを修正するために50年ほどかかったことを思い出すだろう。

警戒すべきは、中国が原子力大国として台頭することだけではない。新興経済国として、中国はその他の国と同様にチャンスを模索する権利を有している。中国が原子力を推し進めることによってその他多くの国に利益をもたらさないわけではない。中国が原子力開発を大規模に進めることによって、何年にもわたる市場低迷と開発中止を経た実質的な原子力市場の幕開けとなるであろう。追加された原子炉はすべて、カーボンフリーの発電容量を増加させることに繋がる。COP21を契機として、中国のみならず世界規模でゼロ炭素発電を劇的に増加させることによって、気候変動の脅威を緩和することができるであろう。

一方で、懸案事項も残る。中国は国内で積極的な原子力拡大を推し進めているが、すぐに海外企業と競合するようになるだろう。日米の民間原子炉製造メーカとロシア、フランス、韓国の国営企業はすべてその影響を受けることになる。中国はかなりの数の原子力発電所を建設しているため、技術を応用して技術的ノウハウを得るであろうし、圧倒的な財力を投入して途上国市場を手中に収めるだろう。

原子力市場への中国の目覚ましい進出は、日米が長期間にわたって維持してきた核不拡散の分野だけでなく、途上国の主権に対しても深刻な脅威となっている。原子炉販売に関して、中国はBOO方式を採用することで途上国のエネルギーインフラを独占することが可能となるだろう。知らぬ間にこっそりと政治的影響力を及ぼし、戦力投射を行う方法なのである。

我々は何をすべきか?

正解は争うことでも孤立することでもない。それよりも、中国の新規炉建設において開かれた市場と競争を促進するために、米国と日本が協力して商業的な原子力戦略を構築するための先陣を切るべきである。中国が利益を得ることができるのは開かれた競争によるものだけとなるであろう。中国が新興経済市場への進出を拡大するにつれ、強力であるが公正なプレーヤーとして世界の市場に関わっていくために、中国に対して「ルールに従う」よう促していくことが必要となるであろう。

一方で、中国との関係における取り組みの他に、日米は、第4世代原子炉と小型モジュール炉(SMR)に重点を置いた先端研究およびイノベーションに対してこれまでよりも大きな規模で、かつ共同して関与していかなければならない。この分野における日米市場は力強い競争力を持ち、中国が歴史的に模倣してきた軽水炉(LWR)については潜在的に飛び抜けており、今後も国際社会に販売し続け、運転を続けて行くであろう。

日米の原子力同盟はかつてないほど重要になっている。世界の原子力産業界が中国の迫りくる津波に直面する今、両国間の原子力協力は極めて重要な意味を持つものとなってくる。既存の市場構造を忘却の彼方に追いやってはならないのだ。