廃止措置:専門家の見解


2016年4月17日、エイコム原子力環境ユニットの上級プロジェクト・マネージャーであるエリック・クノックス氏が日米円卓会議の四半期メンバー会合で講演を行った。国際的な原子力産業の主要なプレーヤーであるエイコムは、廃止措置、除染、解体、取壊に関する「D4」の資格を有し、世界中のプロジェクトに従事している。原子力産業界が重要な時期を迎える中で、クノックス氏は原子炉廃止措置に関する世界の認識について貴重な見解を示した。

クノックス氏は、まず世界の原子力産業を取り巻く現状を概況した。441基の原子炉が世界の電力の11%を構成し、既存原子力設備容量の約80%はOECDに位置すると述べた。

クノックス氏はその後、近いうちに原子力産業が直面する大規模な廃止措置に話を移した。現在までに商業炉110基、実験炉または原型炉46基、研究炉250基が永久に停止されたとクノックス氏は報告する。また、IAEAは今後20年以内にさらに200基の原子炉が停止するとの予測を示している。

これについての理解を深めるため、クノックス氏は1960年代と1970年代を取り上げた。この時期は直接的な相関関係に見られるように、新規原子炉が4カ月に1基のペースで建設されていた。そのため、これら原子力開発当初から稼働する発電所が運転寿命に近づき、2020年初めには運転を終了する割合が急増することが見込まれる。今のところ、発電所の運転寿命が延長されない限り、2048年までに米国内のすべての発電所が運転を終了すると想定される。

Global reactor profile

クノックス氏は、廃止措置には「すべてに万能な」アプローチはなく、そのプロセスは本質的に「取壊」であると強調した。クノックス氏はプラント運転終に繋がる3つの主要な要素を明確化した。

  1. 75%が想定される経済寿命に到達することによるもの
  2. 20%が政治的または規制による圧力によって早期停止に追い込まれるもの
  3. 5%が事故によるもの

廃止措置自体の費用は原子炉1基あたり約7億5,000万ドルから10億ドルであるが、原子力発電所建設に係る高額な先行投資費用がこれに加わるため、多くの発電所が経済的に運転終了に追い込まれているのである。

最終的な廃止措置額に影響をおよぼす要素は、国によって異なる。これらの要素に含まれるのは、国内経済、政治、または規制条件、当該国の発電事業者が利用可能な廃止措置に関する資金調達の選択肢であり、最も重要ことは、廃棄物処理に関して選択肢が選べることである。

decommissioning costs graph原子力エネルギー

クノックス氏は、当初の停止やプラントの取壊から廃止措置に関する費用や条件がかなり増加していると説明した。高レベル放射性副産物や低レベル放射性貯蔵容器などを含む放射性廃棄物のために、処分や長期貯蔵が必要である。

容器を考慮に入れないとしても、米国の既存原子力発電所は放射性廃棄物を約13万~14万トン排出することになるだろう。地下42マイルに建設されるユッカマウンテンでは7万トンの収容を見込んでいるが、米国では最終的な長期貯蔵のためには容量を倍増させる必要が出てくる可能性がある。これは紛れもなく問題であるが、この苦境には対処することができるとクノックス氏は主張した。現場の専門家は非常に優秀であるが、米国やその他の国でも解決しなければならない政治的な問題が存在する。

聴衆からの質問を受け、クノックス氏は放射性廃棄物最終処分の科学的適合性に関する課題について簡単に述べた。日本のアプローチは、信頼性がありかつ安全な長期貯蔵に必要となる科学的適切性を極めて重視している。一方で米国では、同意に基づくサイト選定の追及を試みているが難しい状況であり、長い間行き詰った状態が続いている。

クノックス氏は最後に、世界の主要な市場が直面する廃止措置の見通しについて、極めて徹底したウォークスルーを提供した。欧州22,654 MW、日本、韓国、台湾4,391 MW(福島第一を除く)からなる進行中のプロジェクトの概要を示した。原子炉運転延長のシナリオをウォークスルーした後、クノックス氏は依然として、今後30年間の原子炉廃止措置費用は、2,000億円を超過する可能性があると結論付けた。

Projected intl d&d mkt

長期間にわたり太陽光のグリッドパリティと天然ガスのコスト競争力が存在する中で、原子力は差し迫った容量におけるギャップを埋めるための新たなプロジェクトはほとんど計画されていないことから、コストに関する懸念がますます重要視され、大部分の原子力発電所が運転終了に追い込まれるだろう。クノックス氏は、原子力にかかる固定費は依然として高く、原子力の将来および世界的なエネルギー安定供給を確実なものとするためには、原子力のコスト以外の利点をセールス・ポイントとすることが重要となってくると主張する。

原子力の利点の中で最たるものは、その土地利用面積である。1,000MWの原子力発電所の物理的な土地利用面積と同じ発電量を太陽光で発電する場合を比較すると、太陽光発電では約100万エーカーの土地が必要であり、原子力での土地利用は微々たるものである。また、原子力は、グリッド管理の観点から魅力的な選択肢でもある。太陽光や風力発電は予期せず負荷が変動しやすく、厳密な負荷管理が必要となる。ドイツは事業者が再エネ増強と原子力停止に苦しんでおり、グリッド管理に関する問題を示す例であるとクノックス氏は指摘した。

プレゼンテーションの内容と効果的な可視化の観点から、クノックス氏のプレゼンテーションは廃止措置市場が世界的に直面している現実と起こり得る様々なシナリオを理解するため、日米円卓会議にとって貴重な資料である。例え何が起ころうとも、原子力廃止措置は来る数十年で確実にブームとなるであろうし、今後絶え間なく進化していく分野が責任ある発展を遂げて行くためにはクノックス氏のような専門家が必要不可欠なのである。

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