NEIが福島事故から5年目に取り組みを行う専門家を召集


最近、Forum on Energy Pulse Point Group と提携して、原子力産業界の専門家へのインタビュービデオシリーズを制作し、福島事故から学んだ最も重要な教訓を明確化した。このシリーズの有終の美を飾るべく、Pulse Point Groupは原子力エネルギー協会 (NEI) と協力し、2月24日水曜日に、一流のスピーカーを招いて同トピックを評価するイベントを開催した。

元米国エネルギー省副長官であり、長期間に渡って日米関係の支持者であるウィリアム・マーティン氏がモデレータを務めた3時間のシンポジウムでは、以下参加者による印象的なパネルディスカッションが行われた。

  • NEI最高経営責任者 (COO) マリア・コルスニック氏
  • 受賞歴のあるジャーナリストであり、「福島への帰還」のドキュメンタリー作家のマイルズ・オブライエン氏
  • オレゴン州立大学原子力工学科の教授兼学科長 キャスリン・ヒグリー氏
  • 東京電力株式会社取締役 姉川尚史氏
  • 元原子力規制委員会(NRC) 委員長であり、現東京電力原子力改革監視委員会委員長のデール・クライン氏

聴講者も、NEI理事長兼CEOマービン・フェーテル氏、元エネルギー省職員兼NRCスリーマイル島事故現地対策ディレクターのレイク・バレット氏、有名な「福島50」の一人である原隆氏など著名人が集まった。

各スピーカーはこのトピックに関する独自の重要な見解を示すとともに、さらに議論を高めるために観客の参加も示唆した。

マリア・コルスニック氏 NEI COO

最初のスピーカーとして、コルスニック氏は、福島事故が米国の原子力業界に及ぼした直接的な影響について、安全性の向上に重点を置いた包括的な見解を提供した。コルスニック氏は、運転中の原子炉内の燃料冷却とベント制御が放射性物質の拡散を防ぐための最良の方法であり、これらの安全性に関する手順に関して作業員へ教育するために改良された訓練計画が実施されたと述べた。

コルスニック氏は、特に福島事故によって原子力産業界が学んだのは、何が発生しようとも、プラントが冷却能力を保つためには水が必要であり、原子炉の安定性維持を目的として水を循環させるために、常に電力が利用可能な状態でなければならないことであると強調した。米国内のすべての原子力発電所が想定される事象に耐えうることを確実にするために、「福島事故後の教訓」の実施に約40億ドルを費やし、日米両国のCNOは関係を強化し、影響力を最大限発揮するために交流を行った。

コルスニック氏のスピーチに続き、エネルギー省の代表として招かれたダミアン・ペコ氏ジュリア・ビスコンティ氏がコメントを述べるとともに、特に以下の指摘を強調した。NRCは原子力の運転に関してグローバル・スタンダードとして見られるので、 福島後の最も重要な教訓は、すべての発電所が「サイトに壊滅的な影響を及ぼす事象」に対して準備が整っている必要があることであった。これが意味するのは、津波の脅威に直面しない米国の発電所が、単に福島事故から顔をそむけることができなかったというより、むしろ、すべての発電所が同レベルの事故に繋がる可能性のある自然災害の可能性、またはヒューマン・インターフェースによって引き起こされる事象の可能性に責任を負わなければならないことであった。

マイルズ・オブライエン氏

多作のレポーターおよびドキュメンタリー作家として、マイルズ・オブライエン氏は、メディアと福島事故の関係に重要な洞察をもたらした。マイルズ氏は福島事故の報道で有名であり、他のどのレポーターよりも多くの時間を福島で過ごしたことを主張するとともに、自身の報告では正確さとバランスを確保するよう尽力してきたことを強調した。

このような評判にも関わらず、オブライエン氏は自らの経験を「コミュニケーションとメディアをどのように取り扱うかまたは取り扱わないかに関するケーススタディ」と表現した。

最初にサイトへのアクセスが困難であったことについて概要を述べた後、オブライエン氏は、東京電力と日本政府間の上層部が連携したことで、世界に福島事故を伝えることの重要性を理解したように思えたが、トップ以外の個人との日々の相互連携ではそれが信じられないほど難しくなったと説明した。効果的かつ直接的に問題を表現するための実際の損傷状況について、サイトの運転員や監督者は作業員に対して規制を課していたと主張した。また、原子力は極めて技術的であり、言語的、文化的に障害がない場合でさえ理解するのが難しいことも強調した。この例で言うと、レポーターは明らかにその両方の問題を抱えていた。

オブライエン氏は、東京電力を「危機的状況におけるグローバルステージでのコミュニケーションの方法を速やかに学ばなければならない企業」と表現した。原子力に関しては、既に多くの誤解や脅威があり、それが正確さを残しつつ住民に好まれる方法で原子力を表現することを困難にしていると強調した。これを達成するために、東京電力は積極的に住民の信頼を得るよう努力しているが、特に柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関しては、依然として取り組まなければならない課題が残っている。

最後に、オブライエン氏は日米協力を継続して構築していくことの重要性について述べた。オブライエン氏の発言で、他のパネリストも賛同したのは、仮により良い交流が行われていたならば、B.5.bなど米国で構築された同時多発テロ後の対策を日本は採用していたかもしれず、そうなれば、2011年3月11日に福島事故は発生しなかったかもしれないということである。

キャスリン・ヒグリー博士 Dr. Higley

ヒグリー博士は、高い評価を受けているパネルにおける放射線の専門家として招聘された。ヒグリー博士は自らを、放出された放射線が環境に吸収される方法についての専門家であると規定することからスピーチを始め、「放射線はどこに行くのか?」や「それによってどのような悪影響があるのか?」などの質問に答える形でスピーチを行った。

ヒグリー博士は詳細なデータを示し、聴講者に伝えることができるようデータを理解しやすい例えに置き換えた。例えば、年間放射線量を以下のように示した。

  • 米国における平均線量 = 6 mSv/年
  • 日本の目標線量 = 1 mSv/年
  • 福島事故に関する避難指示の最大線量= 50 mSv/年

より高い年間放射線量を受けたが健康への影響はなかった人口の多いサイトが世界中にあることを明確に述べ、今回は避難民が集中的に放射線に晒されたことによって認知の仕方が変わったが、必ずしも健康リスクの実態を反映しているわけではないことを認めた。

福島第一原子力発電所の周辺で甲状腺がんの発生率が上昇しているとの最近の報道についての質問に対する回答として、ヒグリー博士は、因果関係対相関関係を見分ける識別力について強く助言した。矛盾する研究を引用し、より感受性の高い分析では、他の分析で見逃されるような症状まで捉えてしまうように、個体を監視しすぎることで、より高いがん罹患率を示すことに繋がる傾向があると述べた。最終的に、ヒグリー氏は、真実が何であれ、唯一言えることは、「それを見守っていなかなければならない」ことであると指摘した。

姉川尚史氏

モデレータのウィリアム・マーティン氏によると、姉川氏は「世界で最も難しい仕事」をしているとのことである。東京電力が膨大な量の調査を行っている中で、姉川氏は第一線で日本の原子力再稼働を推し進めつつ、事故後5年間の東京電力の報告をプレゼンテーションするため米国へ赴いたからである。

Tepco Anegawa姉川氏は、クリーンアップ作業において、特に汚染水問題に関して、福島県の地元漁業協同組合との協力とコミュニケーションの重要性を明らかにした。最終的に漁業協同組合の承認が得られれば、東京電力は地下水の汚染を大幅に低減する凍土遮水壁の稼働開始に関する承認を「すぐに」得られるだろうと期待する。

姉川氏は福島サイトにおける封止材の設置が成功したことを述べつつ、2年前には毎週または2週間ごとに漏えいが発生し、世界に「混乱」を招いたことについて、東京電力を代表して丁寧に謝罪した。

ポジティブな面については、福島事故を契機として開発が進められた新たな廃炉技術、特にロボティクスにおけるイノベーションに世界が大きな関心を寄せていると述べた。新技術の開発によって、今年末までに、クリーンアップ作業を推し進める上で重要なステップである格納容器下部の溶融燃料の状態を東京電力が見ることができるようになると期待する。

終わりにあたり、姉川氏は東京電力は柏崎刈羽原子力発電所を「世界で最も安全な原子力発電所」にするための対策を行っていること、また地元自治体とのコミュニケーションの改善を引き続き行っていることを発表した。

デール・クライン博士

様々な発見があったセッションを締めくくるにあたり、原子産業界において最も認められ尊敬を受けている人物の一人であるクライン博士がスピーチを行い、自らの見識を示した。日米関係の結果として、またコミュニケーションにおける開発を再び強調した結果として生じた進展を示した。クライン博士は特に、米国側で、部下に対して指示に盲目的に従うのではなく、上司に質問するようますます促している中で、日本の事業ダイナミクスに起こった変化について述べた。

同様に、世界の原子力産業界における安全文化について述べ、安全は常にスケジュールに優先しなければならないと主張した。また、原子力を取り巻く共通した誤解についても取り組み、このセクターにおける死亡者数はもっぱら産業的な原因によるものであり、放射線や「原子力」に固有なものではないことを明確に示した。数を比較した場合、年間の死亡者数は原子力よりも石炭の探鉱のほうがかなり多いが、スティグマが完全に異なる。最終的に、クライン博士が述べるように、「発電するための完全な方法はない」のである。

スピーチを終えるにあたり、クライン博士は二国間の業績を強調した。一つは、東京電力が明確にサイトの安定から主要なステップである廃炉およびクリーンアップの状態へ移行したことである。もう一つ強調したのは、NRCと日本の原子力規制委員会(NRA)の関係が進展したことである。NRAが自らを自律的な機関へと発展させたことを受け、クライン博士は両機関が法的機関ではなく技術的機関としての役割を継続して果たさなければならないと述べる一方で、NRAがNRCの指針を取り入れる予定であることを称賛した。クライン博士の知る限りでは、NRAはNRCの既存の要求事項をすべて採用する意図があることを示しており、それによって予見可能な限りの将来に渡って両機関の関係が継続していくことが保証されることとなる。

最後に、本イベントは非常に友好的な雰囲気の中で行われた。福島事故は日本と世界の原子力産業界に忘れがたい跡を残したが、日米二国間の関係は間違いなく強まる結果となった。本イベントが時宜に叶い適切なものであることによって、福島事故から5年を迎えるにあたりより幅広い議論が行われた。

「福島からの教訓」ビデオシリーズ全巻はこちら

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