新興市場における原子力の将来:ブラジル


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ForumOnEnergy_BrazilMapブラジルは、世界最大のエネルギー消費国の一つである。天然資源が豊富なブラジルは、石油、ガス、ウラン市場において力強い輸出力を有している。現在、ブラジルは、環境に優しく安定的な発電が可能な水力発電に頼っている。しかしながら近年、経済成長、エネルギー需要の増大、水供給の不確実性などにより、最大時には約20%もの供給不足が発生することもある。このような背景から、ブラジルでは現状のシステムを補完する代替的なクリーンエネルギーが模索されている。

現在ブラジルでは、リオデジャネイロ州アングラ、イタウリナ・ビーチにあるCentral Nuclear Almirante Álvaro Alberto (CNAAA)で2基の原子炉が稼働中であり、国内の総発電量の約3%を賄っている。同発電所における3基目の原子炉についても現在建設が始まっているところだ。加えて、さらに2つの原子力発電所を別の場所に建設するという新たな計画も進行しているが、成果は微々たるものに留まっている。

歴史

ブラジルは、原子力発電にとって必要な天然資源を有り余るほど有している。調査によって、ウランやトリウムなど十分な燃料資源が発掘されているのである。1930年代、ブラジルは政府主導の理論的研究プログラムに乗り出した。1951年までに、ブラジルは原子力技術やノウハウの移転についてアメリカと輸出交渉を行った。そして、研究会議(National Research Council)を通して、ブラジルにおける原子力技術の開発が始まったのである。

1950年代には、ウラン濃縮のため、ドイツから3基の遠心分離機を購入する調整を行っていた。しかし、政治的不安定さと財政的な制約により、手続きは遅延せざるを得なかった。1957年にブラジルは、アメリカのAtoms for Peaceプログラムを通して最初の実験炉を獲得し、3年後の1960年にTRIGA Mark 1が建設された。しかし、政変を通して軍部が政権を奪取した際、技術移転元の国は、ブラジルとの協力に対し用心深くなった。軍部は、全ての原子力発電サイクルを支配下に置くことで、ブラジルの豊富な天然資源を資本に組み入れたのである。最初の原子炉Angra 1号機の建設は、ウェスチングハウス社との契約のもとで1972年に開始された。

国際エネルギー市場における変化に伴い、ブラジルへの国際的な支援は減少していった。インドの核兵器実験はアメリカやその他の国に衝撃を与え、各国が技術移転に対し消極的になっていった。加えて1973年のオイルショック以降、エネルギーセキュリティを確保することの重要性が認識され、アメリカは燃料の輸出量を大幅に減少させたのである。

ブラジルは1957年以降、新世紀においては原子力が不可欠だと考え、ドイツやフランスとの協力に関する議論をより加速させた。ブラジルは、15年間かけてドイツから8基の原子炉を購入することに合意した。しかし国際的に見ると、この合意は各国を刺激した。ブラジルは依然として軍事政権であり、核拡散防止条約の批准国ではなかったためだ。直後に、Angra 2号機、3号機という原子炉2基の建設が開始された。ブラジル電力会社Electrobrasの子会社であるFurnance社が、双方の原子炉についての契約を勝ち取った。しかし、ブラジルは1980年代に経済的不況に陥り、全ての建設や合意が遅延してしまった。ブラジルの原子力計画は完全に再構築され、Indústrias Nucleares do Brasil社が新たにNuclebrás社の代わりとなった。Angra 2号機の建設は、コスト超過に対する民衆の抗議によって再度中断された。2000年には建設が完了し、送電網へ接続されている。

新たな建設

Angra 3号機の計画は、1980年代に始まった。多くの構造物が1980年代半ばに購入されたが、計画は1986年に中断してしまった。2007年にプロジェクト再開の許可が下り、2010年6月1日に最初のコンクリート打設が始まった。福島事故の反省を活かすため追加的な検討が必要となった結果、計画は2018年まで3年間延期となった。ブラジルは、建設の完了に向けてArevaと契約を締結している。設備に関する契約については、複数のブラジル企業が競合している状態にある。

一般的には

ブラジルの原子力計画に対しては、軍からの影響が依然として大きい。ブラジルは、軍がウラン濃縮技術を商業用原子力プログラムに借用している唯一の非核兵器保有国であり、原子力分野では海軍のほうが技術的に優位な状態にある。またブラジルは、原子力潜水艦を開発している国の中でも、唯一の非核兵器保有国である。

出典: Penn EnergyBrazil BusinessEIAThe EconomistWorld Nuclear News