原子力に関する進化した見解:リチャード・ローズとのQ&A


リチャード・ローズ(撮影:ナンシー・ワーナー)

リチャード・ローズ(撮影:ナンシー・ワーナー)

リチャード・ローズ氏(『原子力の再生:エネルギーに関する常識』やピューリッツァー賞を受賞した『原子爆弾の誕生』を含む24冊の書籍の著者・編者)は、20世紀前半における初期の核兵器の歴史や、一般的な現代物理学の発展について、後世に伝えている。ローズ氏は、『パンドラの約束』で特集された専門家の一人だ。『パンドラの約束』は、「反原子力」から「原子力は気候変動を遅らせる戦いの中で重要な要素である」と考えるようになる環境運動の進化に関するドキュメンタリーである。

Forum on Energyのインタビューでは、ローズ氏はなぜ日本が原子力を継続して利用すべきかについて語っている。

Forum on Energy: なぜあなたは原子力発電に対してかつて懐疑的であり、何があなたの見解を変えたのですか?

リチャード・ローズ: 1970年代、私は、プレイボーイやアトランティック・ハーパーズといった雑誌へ寄稿するジャーナリストだった。その頃は、エネルギー問題や環境に対して非常に関心が高い時代であった。私は、原子力発電に反対するという通常のジャーナリストのお決まりの行動をとり、原子力発電を嘲った記事もいくつか執筆した。あれは単なる無知以上の何物でもない。私はこの分野について、本当に何も知識を有していなかったのだ。

私は、『原子爆弾の誕生』執筆にあたって調査を行い、それを自覚した。私は、最初の原子爆弾に関わった物理学者や化学者本人に、一人ひとりインタビューを行った。彼らはもちろん信頼できる人たちであった。彼らの多くはノーベル賞受賞者であった。ロスアラモスの中心人物であったハンス・ベーテは特に素晴らしかった。私の原子力発電に対する態度は、自身が知識を得るにつれて変化した。私の原子力に反対するという考えは、無知からきているものだと気がついたのだ。

話を聞くにつれて、私は我々全員が徐々に理解しなければならないことを理解できるようになった。それは、我々はすべてを知ることはできないということだ。ある時点で、あなたはその分野の専門家を信用しなければならない―彼らを信用できないという明白な理由がない限りは。(ある環境保護主義者が考えるようなこととは異なり、原子力開発を支持する人々は原子力産業から雇われているわけではない。)だから、考察によって、原子力発電はまさに20世紀における大発見であり大進歩であるということを理解するようになった。

Forum on Energy: 福島事故は日本のシステムに対するあなたの考えをどのように変えましたか?

ローズ: 公的責任を認めることに関する日本の文化的偏見は、見直される必要がある、という程度だ。日本の原子力発電産業界には、責任を認めないという文化があるように私には思える。この性質は、おそらく、何よりも、産業の問題の背後にある。

たとえば、福島では明確な設計上の欠陥があった。私はいまだに理解できないのだが、洪水のリスクを考慮した上で、なぜ重要なバックアップ発電機が地下にあったのか。

私が何度も強調されて聞いたことは、原子力発電が進んでいるすべての国では、安全文化の重要性が非常に大きいということだ。安全文化には、問題に関する透明性も含まれるべきだ。日本において、政府と民間電力会社間の関係が緊密だったことは、問題を認めたがらない一つの要因かもしれない。このようなことは、米国ではありえない。米国の安全文化は、スリーマイル島事故以降、大きく改善してきた。私は日本も同様となることを期待している。

Forum on Energy: あなたは、日本が原子力に戻ることを検討すると考えますか?日本の「原子力アレルギー」についてどう考えますか?

ローズ: 私は、日本には他の選択肢がないと考えている。フランスはかつて原子力に重点的に取り組むことについて、以下のように述べている:我々は石炭もガスも石油もない、だから原子力を利用するのだ。これは日本にとっても同じことだ。原子力発電は第一級のエネルギー源であるが、極めて密度が高く、注意深く取り扱わねばならない。日本の素晴らしい技術者や運転員は、より安全な設計や運転手順を開発することができる、ということは疑いようがない。日本は原子力発電を継続する必要があり、おそらく拡大する必要があるだろう。世界的な気候変動問題の中で、日本のエネルギー需要を満たす大規模なエネルギー源は他にない。

Forum on Energy: 日本では、他のエネルギーで間に合わせることができると言われています。これについてはどう受け止めますか?

ローズ: より密度の高いエネルギー資源に向かう取り組みは、17世紀初め、英国人が木材から石炭にシフトした、今から500年前に始まった。その取り組みは今までずっと継続している。: 密度の低い資源から離れ、より密度の高い資源に向かう取り組みだ。

私は、分散しており、かつ断続的で、出力のピークと谷の差が非常に大きいエネルギー資源— いわゆる再生可能エネルギー —にどうしたら回帰できるのか分からない。太陽光や風力にとって不都合な事実の1つが、それらの再生可能エネルギーには、日が暮れたり風が無かったりして発電しない時に電力を供給してもらうためのバックアップシステム―今日では天然ガスが典型的だが―が必要だということだ。それらのエネルギーの出力は相応に低い。その点について原子力と比較すると、米国では出力の90%以上の発電が行われている。風力や太陽光の出力係数は12-15%程度、つまり、ほとんどの時間発電していないということだ。稼働率が低く地域性のあるエネルギー資源は、長期的な解決先ではない;それらは化石燃料の継続的な利用を後押しするだけだ。確かに、世界には太陽光や風力が意味をなす場所もある。さらに言えば、我々は化石燃料を乗り越えようとするのであれば、あらゆるエネルギーが— すなわち原子力も再生可能エネルギーも―必要になるということだ。

エネルギーと人間のライフ・スパンには直接的な相関関係がある。電力の利用と生活の質にも直接的な相関関係がある。世界の人口は2050年までに100億人となる見込みだ。もし発展途上国が米国、ヨーロッパ、日本といった国の基準で生活するようになるのであれば、我々は現在生み出しているよりも遥かに多くのエネルギーが必要となる。そして、私は、原子力のさらなる目覚ましい発展なしには、そうした世界が実現するとは思えない。日本、韓国、中国およびインドは、どの国も広範囲に原子力発電所を準備しているか、もしくは計画しているかであり、この考えに同意していることは明らかだ。サウジアラビアは最も新しく原子力発電を始めることにした国だが、脱塩と空調に用いる電力を供給するために非常に多くの原子力発電所と、それと同出力の太陽光発電所を建設する計画を最近発表している。興味深いことに、同出力の太陽光発電所を建設するために、原子力の10倍の費用がかかると見積もられている。

Forum on Energy: あなたの著書「原子力の再生」では、米国が導入を検討すべき技術として、原子力廃棄物の再処理におけるフランス方式についてお話しされています。現在もこの考えに変わりはありませんか?

ローズ:その考えをより強くしている。私がずっと分からないでいることは、なぜ原子力技術者として訓練を受けたジミー・カーター大統領が、再処理を行わないことを独断で決めてしまったのかということだ。その判断は反対されるべきだった。ウランそのものは豊富にあるが、ウランの供給は核燃料の再利用が行われなければ比較的限られている。ウラン燃料に含まれるエネルギーのうち98%は、1回目の使用時には利用されない。1回使っただけの核廃棄物を埋めるのは、金を埋めるのと一緒だ。なぜそんなことをするのだろう。

使用済み燃料から、核分裂による生成物とプルトニウムを取り出す場合、より少ない長期間廃棄物を、より簡単に処理することができる。減衰するまで数百年間保管する必要がある部分を取り出し、残りを燃料に戻して、核燃料を再利用する優れた技術が―特に、電気を用いた処理(注:乾式再処理法を指す)―がある。次世代型が、ウランだけでなくプルトニウムも燃やせるようになった後のさらに次世代型となる原子炉の設計がある。こうした状況下では、我々は核燃料の20,000年というような長い期間を手にしているのだ。

Forum on Energy:核兵器の脅威という点では、プルトニウムを取り出すことは問題にならないでしょうか?

ローズ: 正しい処理方法を用いるのであれば、問題にはならない。電気を用いた処理は、プルトニウムだけを取りだすのではない—本当に厄介な高レベル放射性廃棄物も一緒に取り出してしまう。つまり、誰も簡単に盗んだり使ったりできないマトリックスの中にプルトニウムを埋め込むのだ。元々原子爆弾用のプルトニウムを作るために開発された化学処理は、現在使われているが、本来使われるべきではない。 というのも、その化学処理(注:湿式再処理法)は、プルトニウムを元々あった形から隔離してしまうからだ。そうすると素手で扱うことができてしまう。

アルゴンヌ/アイダホ乾式再処理技術は、統合高速炉(IFR)の開発とともに1980年代に開発されたものだが、本来は増殖を起こさない方式だ。いずれにしても、プルトニウムはその純度では国産の爆弾に使うことはほぼ不可能だ。

再処理は、フランスのように、我々も本来取り組んでいるべきものだ。必要ならば我々は、現在開発中だが、MOX燃料を燃やせる原子炉ができるまで、その物質を補完しておくことができる。

Forum on Energy: 米国の技術はたくさんありますが、そうした技術の米国における商業面の将来性はあるでしょうか。

ローズ: あるが長期間ではない。天然ガスが入手可能であることから、原子炉用ウラン燃料の価格は、何年もかけて再処理を行うことがとても考えられないところまで下落した。現在、米国の原子炉では水のタンクか乾式キャスクの中に使用済み燃料が保管されている。それは結構なことだ。私は乾式キャスクの周りに行って、それにガイガーカウンターをかざしたことがある— が、乾式キャスクは、使用済み燃料を必要となる時まで保管するには優れた、安全な所だ。そして、その間に、燃料の中にある放射性の核分裂生成物は、うまい具合に減衰していく。

Forum on Energy: 米国における原子力エネルギーの成長が鈍化すると仮定すると、将来的に原子力技術や知識の分野における米国のリーダーシップは無くなってしまうのでしょうか?

ローズ: 中国、韓国、およびその他の地域における原子力発電所の建設計画では、アメリカ人の知識は確実に必要となる。しかし、長期的に考えると、それらの国々は自分たちの知識やノウハウを発展させることを望む。だから、今後20年間において、米国の技術面のリーダーシップがどのレベルにあるのか、私には分からない。

10年ほど前、卒業研究で原子力工学に登録する学生が誰もいないという心配な状況があった。現在は当時ほどではないが、私の印象では、学生のほとんどが中国、韓国およびその他の国々の出身だ。知識や技術がどこかに行ってしまったわけではないが、海外には出ているだろう。

Forum on Energy: 2000年のForeign Affairsの記事で、あなたは、原子力は死んでいないとおっしゃいました。今日でもその考えを守っていらっしゃるようですが?

ローズ: アジアでのあらゆる新たな発展を考えた場合、原子力は死んだ、などとどうしたら思えるのか私には分からない。チェルノブイリ以降、反原子力の波が続いている。現在、天然ガスが入手可能であることに関連して、原子力は停滞している。原子力は優れた技術であり、世界が直面しようとしている問題、すなわち地球温暖化の問題に見事にマッチする。長期的に考えれば、原子力は勘定に入れなければならない。私は反原子力の活動家と議論することはやめた。世界は投票を行い、原子力が勝ったのだ。

さらなる情報については、 Forum on Energyに掲載のアカデミー賞候補、ロバート・ストーン監督に対する最近のインタビューを参照ください。