スリーマイル島原子力発電所と福島第一原子力発電所:災害対応ロボットの利用状況


2011年の福島第一原子力発電所でのメルトダウン事故と、1979年のペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所での軽度のメルトダウン事故は、原子力史上最も注目すべき事故に数えられる。いずれの場合も、災害に対応し除染作業を開始する初期の取り組みでは、作業者は非常に危険な状況に直面した。また、いずれの場合も、対応チームはロボットによる支援に注目した。

ロボットは、人には危険と見なされる場所に入っていけるため、除染作業の支援には適しているが、人の作業の一部を真似ることができる人主導の道具としても機能している。

スリーマイル島原子力発電所と福島第一原子力発電所の除染でロボットが使用された状況と、ロボット技術を将来利用する上での事故から学んだ教訓について、Forum on Energyによる分析を以下に示す。

スリーマイル島原子力発電所(画像提供:DOE)

スリーマイル島原子力発電所(画像提供:DOE)

スリーマイル島原子力発電所

1979年3月28日の午前、ペンシルベニア州ミドルタウンの近くにあるスリーマイル島原子力発電所2号機(TMI-2)の原子炉で、軽度のメルトダウンが発生した。機械系統または電気系統の故障と、パイロット作動式逃しバルブを作業員が閉じられなくなったことが重なり、重大な原子力発電所事故になった。

TMI-2ではメルトダウンが起きたが、発電所以外への影響は最小限で済んだ。チェルノブイリや福島の事故とは異なり、TMI-2の格納容器建屋は損傷を受けておらず、事故を起こした放射性物質のほとんどすべてを保持していた。

プラントは直ちにシャットダウンされ、状況に対処するための予防措置が講じられた。対応チームが建屋内に事故後初めて入ったのは1980年7月であるが、放射能が人体被曝の推奨限界値を超えていることが判明した。全面的な除染を本格的に開始するまでに数年はかかるが、まずは、当局と専門家が、汚染の程度と場所を評価するために時間をかけて慎重に取り組む必要があると判断された。除染作業の主要業者であるベクテル社の技術者は、汚染区域への新しいアクセス方法と評価方法について、カーネギーメロン大学のロボット工学のウィリアム・「レッド」・ホイッタカー教授に相談した。

同教授は後に、「堆積物の深さと苛酷さがはっきり確認できなかったため、通り抜けなければならない泥と地形の状況も、所々にある水と資材の深さもわからなかった」と、米国原子力学会の出版物の中で述べている。

ホイッタカー教授は学生のチームを作った。この中には、現在、カーネギーメロン大学の全米ロボット工学センターのジョン・バーレズ所長や、同大学の人間生活工学研究センターのジム・オズボーン理事などがいた。同チームは6カ月を費やして、スリーマイル島原子力発電所のメルトダウン事故の残骸を探査する専用のロボット3台のうちの最初の1台を設計し製作した。

Rover(画像提供:カーネギーメロン大学)

Rover(画像提供:カーネギーメロン大学)

Rover

Remote Reconnaissance Vehicle(Roverとも呼ばれる)は、同チームが最初に作ったロボットである。照明、カメラ、リボン状のケーブルを搭載した6輪車で、このケーブルにより、ロボットへの電源供給とビデオ映像の送信の両方を実現している。Roverの任務は、メルトダウンした原子炉建屋地階の事故後最初の画像を記録・送信することであった。Roverには数年かけて、表面洗浄、サンプル採取、放射性スラッジの汲み出しなどの除染作業も可能にする装置が搭載された。

しかし、Roverは現在稼働しておらず、作業中に汚染されたため、建屋地階に放置されている。

CoreSampler(画像提供:カーネギーメロン大学)

CoreSampler(画像提供:カーネギーメロン大学)

CoreSampler

ホイッタカー教授のチームが2番目に製作したロボットが、Roverを改造したCoreSamplerである。このロボットは、原子炉の壁に自動的に穴を開け、円形の破片を取り出せる構造になっている。これにより、壁の中に浸透した放射線の距離と量を科学者が得られるようになった。しかし、Roverは原子炉建屋の地階に入った以降、すでに汚染されているため、結局、除染チームは、Roverにコア(炉心)のサンプルを採取する装置を取り付ける改造を行うことに決めたのである。

「こうしたロボットの中の1台は、地階での除染ですばらしい、広範囲で長時間の作業を実施しました」と、ホイッタカー教授は述べている。「別の1台は、放射線に被曝させない計画で、教育訓練、分析、ツール作成、技法開発などの用途向けに被曝のない状態を保証していました。地階の除染には4年かかったため、大変な作業でした」。

カーネギーメロン大学のチームとWorkhorse(画像提供:カーネギーメロン大学)

カーネギーメロン大学のチームとWorkhorse(画像提供:カーネギーメロン大学)

Workhorse

カーネギーメロン大学による3番目にして最後のロボットはWorkhorseであった。CoreSamplerとは異なり、このロボットの構造はまったく新しいものである。表面の高圧水洗浄から構造物の取り壊しまで、さまざまな除染作業が実施できるロボットであり、システムの二重化が施されている。つまり、部品が故障しても、バックアップ部品に切り替えることでロボット動作が維持可能である。Workhorseは、構造が複雑なため保守と洗浄がきわめて困難であり、これが災いして、結局スリーマイル島原子力発電所では一度も利用されなかった。

「多機能なロボットの製作依頼を受けたのですが、できたものは馬鹿でかい多機能ロボットでした」と、バーレズ氏は後に語っている

スリーマイル島原子力発電所の残留汚染は、自然の減衰にまかせる方が安全で低コストであると当局が判断したため、除染の大部分は1990年までに完了となった。ホイッタカー教授によると、メルトダウンの除染に取り組んだ教授のチームのお蔭で、ロボット産業の新規分野が活性化され、「アイデアから実装まで新技術が推進された」。

福島第一原子力発電所の航空写真(画像提供:国土交通省)

福島第一原子力発電所の航空写真(画像提供:国土交通省)

福島第一原子力発電所

1980年代に技術者が、スリーマイル島原子力発電所のメルトダウン事故に対処する新技術を考案し作り出すことを余儀なくされたのはもっともなことだと思われた。それから30年経ち、日本は、先端技術で優位にある国で、繁栄したロボット産業の中心国であったが、重点を置いた技術分野はそれとは別の分野であった。

日本は、多数の社交的ロボットプロジェクトや、非常に多くの実用的で画期的な移動装置や個人補助装置で有名であった。これらは、高齢者の介護や生活の質の向上など、日本で急速に進む高齢化を考慮したものであった。しかし、「実用的で効果的な探査ロボットと救助ロボットの技術が非常に不足していた」。実際、ロボット産業は、福島の事故の10年前に、競合する優先分野のために、繊細な回路を損傷させることがある高レベル放射線からロボットを防護する方法に関する研究を停止 していた。

福島の汚染区域に最初に入ったロボットは米国製のPackBotであった。アイロボット社が製造し、主に軍が戦場で使用していたものである。

福島第一原子力発電所に入る米国製ロボットPackBot(画像提供:東京電力)

福島第一原子力発電所に入る米国製ロボットPackBot(画像提供:東京電力)

日本製のロボットQuinceが汚染区域で使用されたのは、極度の放射線に対する防護や、遠距離からの制御方法の開発などの広範囲な改造を実施してからであった。Quinceと技術者を450 mのケーブルでつなぐ制御装置の解決策も、失敗の原因となった。当初、ロボットは正常に動作しており、実際のところ、いくつかの点ではPackBotより優れていたが、ケーブルが切断したため、Quinceは2号機の内部に放置されたままである。

1年前には、日本製のロボットの福島での災害対応に批判が広がったが、それ以降、日本は、メルトダウンした場所でのロボットの利用を促進させてきた。福島ではさまざまなロボットが10台以上使用された。2013年11月に、東京電力(TEPCO)は、遠隔操作の小型のボート型ロボットを福島第一原子力発電所の1号機の中に送り込み、格納容器から水漏れしていることを初めて検出した。東京電力では現在、ロボットを使用して漏れ口を見つけ、可能なら塞ぐことに重点を置いている。この遠隔操作のボート型ロボットの直前に、千葉工業大学が開発した別のロボットが、原子炉内部の3次元マップを作成した。同大学の未来ロボット技術研究センターは最近、Sakuraの2号機の開発を完了した。その製作費は5000万ドル以上かかった。

The Wall Street Journalによると、福島の除染の支援用に作られる将来のロボットは人型ロボットではなく、除染は「1台ずつが特定の作業に特化された特定用途向けロボットの小グループ(三菱重工業・原子力事業本部の主席技師である大西献氏の発言)」に頼ることになると、日本の複数の専門家は考えている。

学んだ教訓

福島での事故は、ロボット産業を活性化し、除染でのロボットの潜在的役割に関する新しい研究開発を推進する促進剤として役立つ経験であった。

日本の技術者による室内でのロボットの練習(画像提供:IEEE)

日本の技術者による室内でのロボットの練習(画像提供:IEEE)

「福島で私たちが発見したことは、車が多数あり、救助員が大勢おり、たくさんの道具が利用できたことです。もし、事故から数時間以内に、こうした弁を閉じ、スイッチを切り、ホースを接続できていたら、大事故の影響はかなり小さくなっていたでしょう」と、DARPA(米国防総省高等研究計画局)ロボティクスチャレンジのHUBOチームのリーダーであるドレクセル大学のポール・オウ教授は述べた。「放射線量が危険レベルであったため、作業員を近づけることはできませんでした。ロボットはどこにいたのか。ロボットはどうして弁を閉じることもできなかったのか。言わば、私たちが学ぶ場になっていました」。

福島での事故に関与している災害対応ロボットは、その数十年前に起きたスリーマイル島での事故に対してカーネギーメロン大学のチームが獲得した技術的進歩の影響をいくぶんか受けているが、福島での災害対応に実際に従事している人々が現場で観察したことも、明確な教訓を伝授している。たとえば、ロボットの操縦性について、塵埃の堆積のため滑りやすくなっており、ロボットが階段を上ることが困難になっていることに、操縦者は気づいた。大型ロボットの重量もバランスをとる上での障害になっており、将来のロボットは、最低限必要なサイズ以上に大型化しないことが望ましい。また、事務棟内での操縦者の教育訓練中に、現在使用されているロボットは室内での利用を想定して作られていないことに、操縦者はすぐに気づくようになった。事務棟の外側の階段は大きすぎるため室内の階段で訓練するのであるが、これは、原子炉内の階段もロボットには大きすぎることを操縦者が知っているからであった。

これは本質的に、他の分野からロボットを転用するのではなく、原子力発電所事故シナリオに特定してロボットを設計すると、小型軽量で、塵埃や瓦礫が散乱した表面上を安全に移動できる接地面を持つ構造になってしまうことを示している。

福島後、民間企業や政府系事業体など世界中の産業は、学んだ教訓を考慮して、除染技術に再度重点を置き始めた。

「福島での事故のほぼ直後に、実用化のための開発と資金提供が促進されました」と、レノ・J・ティブク氏(Anthrobotic.comの設立・運営者、非営利組織Robohub.orgの貢献者)は述べている。「三菱、東芝、ホンダ、パナソニック、トヨタなどの民間企業では、すでにほとんどの企業がロボット研究を実施していますが、最近、独自の専門技術に対して資金提供と投資を増やしています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、経済産業省(METI)などの政府機関も、大学でのロボット研究や官民提携への支援を強化または再重点化しています」。