新興市場における原子力の将来:アラブ首長国連邦


Forum on Energyの新興市場シリーズでは、新興市場における原子力発電の将来を国別に特集している。多くの国が福島事故を受けて原子力エネルギーの利用を手控えている一方で、原子力エネルギーを将来の主要エネルギー源としようとする新興国の明確な取り組みも存在する。そのような国の中で、Forum on Energyが新興市場シリーズでとりあげるベトナム、アラブ首長国連邦、ヨルダン、中国、トルコ、インドそしてフィンランドは、ほんの一部である。

 

UAE_01アラブ首長国連邦(UAE)は、原子力エネルギーを初めて導入することに関心を持つ国にとっての世界的なロールモデルとなるつもりである。

UAEは莫大な原油、天然ガス資源を有することで知られ、1971年にイギリスから独立を宣言して以来、この豊富な資源は国の経済の基礎をなしてきた。急激な経済成長や人口増加、ライフスタイルの変化による昨今の電力消費の急増は、国内の電力グリッドを圧迫しており、同国は代替のエネルギー源を模索することになっている。2008年、UAE政府は、国内の電力需要を満たしエネルギーミックスを多様化させるため、新たな持続可能なエネルギー源として原子力エネルギーに関心があることを発表した。

アブダビ水電力庁(Adwea)、ドバイ電力水庁(Dewa)、シャールジャ電力水庁(Sewa)、連邦電力庁(Fewa)といった4つの発電事業者が、UAEには存在する。2011年、この4社は104,142GWhを発電したが、国内の電力需要は95,508GWhであり供給能力限界にまでほぼ達していた。電力需要は年間約9%上昇する見込みであり、UAEは発電能力の早期拡大に迫られている。

(画像著作権:WorldAtlas)

(画像著作権:WorldAtlas)

世界第3位の原油輸出国であるUAEは、主にアジア市場へ原油を供給しており、その大部分は日本向けである。UAEには、6つの輸出基地があり、オマーン湾沿岸のフジャイラに位置する基地は、ホルムズ海峡と関連した海賊リスクの懸念といった観点から、最も重要とみなされている。近い将来、フジャイラの基地の貯蔵能力を800万バレルから1200万バレルまで拡大する計画が存在する。

(画像著作権:EIA)

(画像著作権:EIA)

UAEは215兆立方フィートという膨大な天然ガス資源を有し、2011年に世界第11位の天然ガス生産国となったが、UAEは天然ガスの純輸入国であり、潤沢な石油の輸出国である。UAEは天然ガスを主としてカタールからドルフィンガスプロジェクトのパイプラインを経由して輸入している。このパイプラインは、カタールからUAEを通ってオマーンへつながっている。2011年、UAEは天然ガス輸入量の約97%をカタールから受け取っており、そのうちの95%がパイプラインを経由して輸入されたものであった。

UAEは、中東地域で最初のLNG輸出国である。LNGの輸出先は、インドやクウェート、台湾といったアジア諸国であるが、そのほとんどは日本向けである。

(画像著作権:Dolphin Energy)

(画像著作権:Dolphin Energy)

UAE社会において、電力供給が安定的でないことが大きな問題となっている。過去数十年間、ドルフィンパイプラインプロジェクトによる天然ガス輸送が遅れたことにより、何度かサービスの途絶が発生している。ドルフィンパイプラインプロジェクトは、2012年に湾岸協力会議(GCC)グリッドの発足につながった。GCCグリッドは、停電数を減らし、必要に応じて季節や時間帯を超えて電力融通ができるようにするため、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアそしてUAEを一つの地域的なグリッドで結んでいる。

炭化水素ベースの電力を安定化させる努力と平行して、UAEは将来の需要を満たすために新しく、効率的なエネルギー源を確立することを目指している。

原子力エネルギーに関する背景

2008年に政府が初めて原子力エネルギーへの関心を示してから、原子力エネルギーの平和利用に関するUAE連邦法2009年第6号(UAE Federal Law No.6 of 2009)が発効し、ライセンス発給の制度設計や核物質防護が可能となった。これにより、連邦原子力規制機関(FANR)、UAE原子力公社(ENEC)が設立された。FANRはUAEにおける原子力産業の規制と原子力エネルギー関連活動へのライセンス発行に責任を負っており、ENECは原子力発電所の建設・運転や連邦機関とともに全国的な電力供給に責任を負っている。

現在、UAEは電力と淡水化をすべて化石燃料に依存している。国の電力需要が2020年までに15.5GWから40GWへ拡大することから、政府は発電量の25%を原子力発電によってまかなうことを目標としている。原子力開発は、大量のエネルギーを消費する淡水化事業に対するUAEの需要を満たし、産業の脱炭素化や発展を約束するものと考えられている。

バラカ12号機

2009年12月、韓国電力公社(KEPCO)が率いる企業連合は、UAE最初の発電所建設のための200億ドルの契約を、フランスや日本、米国といった他の競合相手をおさえて受注した。アレバは、UAEが韓国のAPR-1400を選択したのはコストが安く、建設期間がより短いからであると指摘したのに対し、ENECのムハンマド・アル・ハマディ最高経営責任者は、“世界レベルの安全性パフォーマンス”のためKEPCOを選定したと発言。アブダビの西部、バラカにおいてAPR-1400の初号機の建設が2012年7月に開始され、2017年に完工する予定である。また、2号機は2013年5月から建設作業が進められており、2018年に完工予定。

バラカは、FANRや米国電力研究所(EPRI)、米国原子力規制委員会(NRC)そして国際原子力機関(IAEA)の分析や指針に基づき、選定された。これらの機関は、立地場所の過去の地震やセキュリティ、人口密集地からの距離、水の大量供給源への近さ、環境上の条件といったものについて分析し、バラカは“低地震活動地域”もしくは地震の可能性が低い場所であることが判明した。

韓国では、UAEの原子力発電所プロジェクトの“レファレンスプラント”となる4基のAPR-1400が現在建設中である。この原子炉設計は、UAEの独特の環境条件に合致するとされる。

今後の計画:34号機

今年3月、ENECはFANRへバラカ3・4号機の建設ライセンス申請書を提出した。これら2基の原子炉は、2020年までに建設が完了し、稼動する予定とされている。4基すべての原子炉がグリッドに接続されると、設備容量は5.6GWとなり、年間1200万トンの二酸化炭素を削減できることになる。

人材

ENECとFANR、カリーファ科学技術研究大学(KUSTAR)はUAEの原子力エネルギープログラムへ向けた人材能力育成のためのプログラムに取り組んでいる。これら3つの組織は、UAE原子力エネルギー奨学金を創設し、連邦内の人々に、UAEや米国、フランス、韓国、英国の単科大学や総合大学で、様々な工学分野の学士号や修士号をとるため勉強をする機会を与えている。奨学金を受け取った学生は卒業後、ENEC、FANRもしくはKUSTARで一定の期間就労することが要求される。

Higher Diploma in Nuclear Technology(HDNT)プログラムは、ENECとKEPCOが提携して応用技術研究所(IAT)が設置した。これは、工学、原子力技術、APR-1400システムの基礎について学生を訓練するものである。また、プログラムでは、4学期間の韓国での実地訓練も提供されている。

上級原子炉運転訓練プログラムではプラントシステムや原子力技術の基礎に関する基礎訓練に有資格技術者を参加させ、幹部マネージャーや上級レベルのスーパーバイザーを育成するため480時間以上のシミュレーター訓練を実施する。

ENEC、IAT、KEPCOそして韓国のSudo電気工業高校は高校生に対し、夏期に韓国への旅行や民生用原子力エネルギーの実務的、理論的側面を学習するプログラムを提供している。

原子力政策:安全、公開そして平和利用

原子力エネルギープログラムを推進する上で、UAEは国際協力を通じて原子力エネルギーの安全性の価値を何よりも強調してきた。米国はUAEと2009年に原子力協力協定(123協定)を締結し、韓国やフランス、ロシア、アルゼンチン、日本といった多くの国も原子力に関する二国間協力を締結した。UAEは原子力エネルギーの利用を平和目的に限ると決定している。その関係で、政府は、国内で濃縮や核燃料の再処理を実施しない決定を発表した。核燃料サイクルにおけるこれら2つの工程は、最も容易に軍事目的に利用されるものである。

原子力安全と透明性の高い運転へ向けたUAEの取り組みは、国際社会からの支持を得ることとなり、UAEは世界的な原子力開発の“ゴールドスタンダード”を確立するため、自国の民生用原子力エネルギープログラムを推し進めている。

懸念

UAEは、制裁下にある国の企業向けにデュアルユーズ品(民生用にも軍事用にも利用できる品)を調達する会社及び貿易機関を保護してきた歴史を持つ。A.Q.カーンネットワークはドバイで設立され、イランやリビア、北朝鮮といった国へ原子力技術が密輸された。この背景により、UAEは違法な不正取引を防ぎ、国境のセキュリティを維持するため、莫大な時間と努力を費やすことになるだろう。また、放射性廃棄物管理と災害管理の戦略についても懸念がある。UAEはまだ最終決定を行っていないが、可能な選択肢を模索しているところだ。

政府

UAEは、7つの首長国(アブダビ、アジュマーン、ドバイ、フジャイラ、ラアス・アル=ハイマ、シャールジャ、ウンム・アル=カイワイン)からなる連邦国家である。憲法に基づき、アブダビ首長がUAEの大統領もしくは国のトップであり、ドバイ首長が首相もしくは政府のトップを務めている。それぞれの首長国はそれぞれ首長を持ち、各首長国政府や鉱物資源や歳入に関する権限を有している。

>>Forum on Energy20125月にもUAEについてとりあげています。前回の記事についてはこちらをご参照ください。

 

出典: