新興市場における原子力の将来:トルコ


Turkey_image01トルコは中東地域で原子力エネルギーの開発を進める国のひとつである。

急速な経済発展と中東地域における影響力の拡大にともない、トルコのエネルギー需要はここ数年で急増している。また、テクノロジーに精通した若者が増加するなか、現在の国産・輸入のエネルギー・ミックスでは将来的に需要を満たせなくなることが予想されている。こうしたエネルギー不足の解消と既存のエネルギー供給元への依存度を低減するためにも、原子力発電所の増設は不可欠―というのがトルコ政府の結論である。

現在、同国ではエネルギーの需要と供給の隔たりが拡大しつつある。国産エネルギーは、エネルギー・ミックスのわずか4分の1程度を占めるに過ぎず、短期的に拡大する予定もない。エネルギー需要を満たすのは、依然として原油と天然ガスの輸入である。国際エネルギー機関(IEA)の予想によると、現在の状態が続いた場合、トルコのエネルギー輸入は今後10年で倍増する。

>>Forum on Energyは昨年、トルコにおける原子力の将来について報告を行っている。トルコの原子力エネルギーの現状とエネルギー・ミックスに関する最新情報は以下のとおり。

中東地域におけるエネルギー貿易は、トルコに従来エネルギーを供給してきた国々が外交上の障害に直面することが増えるにつれ、ますます複雑化している。原油の主な供給元は現在もイランだが(以下の図を参照)、財政・貿易面での制裁により、イランの経済は疲弊しており、その影響は原油の輸出にも及んでいる。また、西側諸国の圧力により、孤立あるいは絶望的な状況に陥りつつあるイランの現行体制に、トルコは警戒感を募らせている。一方、米国とイスラエルが軍事的対抗を示唆して警告しているにもかかわらず、イランはホルムズ海峡の閉鎖を画策しており、さらにシリア紛争が中東地域の安定を脅かす中、トルコはエネルギー・ミックスの多様化に加え、より信頼できるエネルギー供給元の確保に躍起になっている。

イラクとロシアからのエネルギー供給も同様に流動的若しくは不確実である。実際、両国は政情不安や紛争により、1990年代と2000年代に繰り返し輸出を中断している。今後もこうした事態が続けば、トルコへのエネルギー供給は不安定化し、国内外の経済への影響も予想される。

このようなエネルギー不安は、限られた天然資源と不安定なエネルギー供給に依存するトルコの脆弱なエネルギー・バランスに大きな影響を及ぼしかねない。

 

トルコの原子力事情

トルコ政府は2007年11月21日、「原子力発電所の建設・操業とエネルギー販売に関する法律」を制定し、原子力発電所の建設と原子力発電による電力の販売についての手順を規定した。(OECD)

トルコにおける原子力技術の歴史は長いが、現在、同国内で稼働している商業原子力発電所は存在しない。一方、1956年に研究炉が建設された際、トルコ政府原子力局(TAEK)も同時に設立され、同研究炉は現在、イスタンブール工科大学の敷地内で稼働している。

 

アックユ:トルコ初の商業原子力発電所計画

1990年代と2000年代に計画が浮上しては中断されたものの、メルシン県ビュユケジェリのアックユに原子力発電所が建設される見通しとなった。計画によると、出力1,200MWの原子炉が4基建設され、年間350億kWhの電力が1,300万人に供給される。これはトルコの総エネルギー供給量の17%に相当する。ロシア連邦政府とトルコ政府との間で交わされた2010年の取り決めによると、ロスアトム社の子会社であるAkkuyu NGS Elektrik Uretim Corporation (APC: Akkuyu Project Company)がBOO(建設・所有・運営)方式で同発電所を建設・運営する。また、この枠組みによると、同発電所はAPCが所有し、その運営をはじめ、放射性廃棄物の処理と電力の販売についても最終的な責任を持つ。さらに、初期の建設に向けてAPCは投資と融資の条件を定め、稼働15年後には保有株の49%を民間企業(対象はトルコの投資家の予定)に売却することになっている。

一方、APCは2013年7月、独立した外部委員会に最初の環境影響報告書を提出しており、建設は2013年末に始まり、原子炉の稼働は2019年に予定されている。建設費は当初200億ドルと見積もられていたが、ロシアの消息筋によると、直近の推定額は250億ドル近くになっている。

アックユ原子力発電所の開発スケジュールについてはここをクリック

 

第二発電所の建設:トルコは日本の先進技術を高く評価

第二の原子力発電所の建設に向け、トルコ政府は日本と協議を重ねていたものの、2011年の福島第一原子力発電所での事故により、計画は先送りされた。しかし両国は2011年7月に協議を再開し、2012年3月23日に原子力協力協定の締結に至った。

トルコのエネルギー天然資源相であるタネル・ユルドゥズ氏が日経産業新聞語ったところによると、第二原子力発電所のパートナーとして候補に挙がっている日本・中国・韓国はいずれも甲乙つけがたいものの、日本のハイテクは非常に魅力的とのことである。

 

シノップ

エロドガン首相と安倍首相は2013年5月3日、黒海沿岸のシノップに第二原子力発電所を建設すべく、総額220億ドルのプロジェクトに合意・署名した。このプロジェクトのために設立される国際コンソーシアムのメンバーは、三菱重工業仏Areva社 伊藤忠商事の3社である。また、運営は仏GDF SUEZ社とトルコ発電会社(EUAS)社が担当し、発電される電力は、日本とトルコの合弁企業が地元の電力会社に販売する。

三菱重工とArevaによるATMEA1原子炉は第3世代プラスの加圧水型原子炉であり、出力は1,100MW級となっている。原子炉第1号機の完成は、トルコが共和制100周年を迎える2023年、続いて4基の原子炉の一斉稼働は2028年に予定されている。

 

今後の予定:第三発電所?

タネル・ユルドゥズ・エネルギー天然資源相は2013年5月、第三原子力発電所の建設に前向きであること、さらに、建設の大半を自力で行うべく、専門技術・知識の蓄積に努めることを明らかにした。計画の詳細は流動的であり、協議もまだ予備段階ではあるものの、最近の報告によると、建設は黒海沿岸のボスポラス海峡北部に面した敷地に予定されており、ブルガリアとの国境にも近い。

上述したアックユとシノップでの原子力発電所が稼働しても、拡大するエネルギー需要が満たされる可能性は低い。しかし、タネル・ユルドゥズ・エネルギー天然資源相は、第三発電所の建設を性急に決定する意向はないとした上で、2025年までにインフラや事業計画上の障害を克服し、2035年には全面稼働させたいと述べている。

 

人的資源

トルコでは、原子炉の専門家は少ないが、ロシアの援助により、原子力発電所のプロフェッショナルを育成する計画が進んでいる。トルコ政府は最終的に600人の学生を留学させる計画であり、現時点で50人近い大学生が同プログラムに参加し、2012~2013年度には高校生を含む75人の学生が原子力を学ぶためロシアに出立した。これらの学生には、奨学金制度により、ロシアまでの交通費や住居に加え、手当が毎月支給される。

さらに、日仏による220億ドルの第二発電所建設プロジェクトにともない、トルコ・日本技術大学の創設が決まり、日本の原子力エネルギー技術が導入される予定である。

>>詳細についてはグローバルマーケットを参照のこと。