放射線と理性:オックスフォードのウェード・アリソンとのQ&A


簡単な質問:福島には何人の放射線による死傷者がいるか?
事実に基づく回答:まったくいない(今後50年間、いないと予測される)

ウェード・アリソン、オックスフォード大学

ウェード・アリソン、オックスフォード大学

これは、ウェブサイト、RadiationandReason.comからの引用で、著書「放射能と理性なぜ「100ミリシーベルト」なのか」の主題であり、この著書はオックスフォード大学の物理学教授ウェード・アリソン氏により、福島事故の2年前に書かれたものである。この著書では、多くの人の考えに反し、我々が普段被ばくしている放射線レベルは極めて安全であることを説いている。Forum on Energyは、アリソン氏に取材し、放射線の様々な神話と誤解に対する見解を聞いた。医療に使用される放射線はなぜ安全に思われる一方で原子力起源の放射線は違うのか、またあらゆるタイプの放射線について、どうしたらより理性的な考えを抱けるのかを尋ねた。

Forum on Energy: あなたの著書について、そしてそれを執筆した動機をお聞かせください。

ウェード・アリソン: 核物理学と放射線に対する知識、そしてオックスフォードで私が受け持った医学物理学課程の経験から、医療分野の放射線に対する態度と環境分野の放射線に対する態度に完全に相違があることに気付いた。例えば日本の人々は、健康を目的として、有益なスキャン技術を利用した放射線を浴びるために高額な医療費を支払う。一方福島で発生した事故の結果、多くの医療処置で使用されるより遥かに少ない放射線被ばく量から逃れるために、人々が住んでいる家から避難している。私が思うに、人々は理解しておらず、説明する必要があると感じた。私は教師であり研究者だ、そして物事を単純化したい、この著書でそれが成功していることを願う。例えば、本書では理解しやすさを考えて、公式の使用を避けた。

Forum on Energy: 素粒子物理学から医学物理学へと興味を移した理由をお聞かせください。

ウェード・アリソン: 私は、大学院過程および長年ほとんどの実験を、素粒子物理学に費やしてきた。素粒子物理学は、核物理学と電磁放射線についての研究が含まれる。約15年前私は医学物理学の新課程を受持ち、この中には数学と物理的測定の素晴らしい応用が含まれ、最新の医用画像と治療法を提供してくれた。私は病院で放射線医と話し合い、その後、物理学の学生と、医療現場でいかに物理学と数学が連携しているかを討論し、これは学生にとって非常に刺激なると私は考えた。しかし、誰も放射線の問題と、有害レベルについて追求しなかった。科学の専門知識でよく見られるのは、あたかもサラミソーセージの薄いスライスのような一つの学問についてはすべて知っているが、例えば放射線の安全性を検証するために必要な方法で、その学問を幅広い領域の前線に集めようとする人がほとんどいないということだ。そこで、これこそ私がすべきことだと思った。

Forum on Energy: イメージする読者像は、そして著書から何を学んで欲しいですか?

ウェード・アリソン: それが問題だ!私は、話をじっくり聞くことができる思慮深い人々に語りかけたいと思う。主題は複雑過ぎないが親しみやすくはなく、読者は多少の集中力が求められる。読者は科学者である必要はなく、数学の経験も必要なく、興味と常識があれば十分だ。マスメディアが伝えるほど、人々は必ずしも愚かではない。人々への講義で、私に議題がないと分かると、彼らはすぐに反応し学習したがる。彼らは講義を受けたいのではない、何を考えるかを教わりたいわけでもない。私は、人々が自分で理解して、自身の結論に至って欲しいのだ。

Forum on Energy: 原子力エネルギーに対して中立か、あるいは心を開いて原子力エネルギーについて学びたいと思う人々がいると考えますか?あるいは、賛成反対のいずれかの強い考えをすでに持っていると考えますか?

ウェード・アリソン: 一部の人々は恐怖を感じている。彼らは中立ではないが、少なくとも話は聞いてくれる。一方、核放射線を嫌悪して、真実を知りたがらない人々もいる。彼らは、原子力を、目に見えない政府の貯蔵庫で発生している何かだと想像している。決して関わろうと思わず、複雑なものであると信じている。大切なのは、彼らに興味をもたせることだ。「私に関係あるの?私は、それを学べるだろうか?」原子力を怖いものと考え逃げようとするのは、冷戦の遺産である。核放射線に関する政治的に操作された恐怖は、誇張されているのだと人々は気づくべきだ。原子爆弾の爆発は極まれで、事故で発生することはない。原子力事故による被ばくの場合、放射線は無害である。あらゆる人類の問題と同じく、恐怖を煽って政治的影響力を行使しようとする人々がいる。彼らは、自分でしっかり理解していないのかも知れないが、その主張は真実を欠いている。

Forum on Energy: 放射線に関して、最も一般的な誤解は何だと思いますか?

ウェード・アリソン: 私は、医療に使用されている放射線(しばしば、琥珀色の警告看板で示される)、自然環境に存在する放射線(緑色で示され安全)、そして原子力事故で生じる放射線(赤色で示され、危険である)について、人々が理解してないように感じる。これらの放射線は多かれ少なかれ同じであり、その強度は人々の予想とは異なる。医療で使用される放射線量は、通常事故での被ばく量より遥かに多いが、健康に有益である。自然つまり“緑色”の放射線は、熱を供給する地球内部の自然の放射能で、最近日本で18,000人の犠牲者を出した津波を始めとして、地震や噴火の原因となる。しかし、福島で破損した原子炉の放射線による死者はいない。我々は、生きている自然の中で暮らし、そこにはいたるところに、身体の中にも放射線が存在し、自然の放射線は必ずしも弱くなく、人工的放射線は必ずしも有害でないことに人々は気づくべきだ。

Forum on Energy: このような誤解を解く最も良い方法は?

ウェード・アリソン: 大切なのは、人々を教育し、安心させることだ。私の著書では、公式を使用せずに類推を使用した。私が利用した一つの類推は、太陽光の紫外線(UV)である。実際、これは類推というより例証である。UVは、我々が問題にしている電離放射線だからだ。UVは危険であり、皮膚がんを引き起こし、死に至らしめ、短時間で細胞を殺し、炎症や日焼けの原因になることも知っている。しかし、だからといって休日に旅行に行く場合、地下6フィートの安全な場所を選択することはない。地下は完全に暗く、夏休み中、まったく太陽に当たらない。このような休日は、決して流行らない!我々は、もっと現実的な行動をとる。アドバイスを受け、日焼け対策をおこなう。十分気を付けながら、子供にどうしたら良いかを教える。この件について国際委員会は存在せず、我々は自身の夏休みを楽しむ。事実、UVは危険であり、多くの人々が皮膚がんで死亡している。しかし、我々は世界を停止させないし、それを理由に経済を脅かさない。しかし、誰も死亡していない原子力事故の放射線の場合は、このようなことをしているのだ。

Forum on Energy: あなたの著書で、進化と生態が、放射線の影響から我々を守っている方法について述べています。もう少し、詳しく教えていただけませんか?

ウェード・アリソン: なぜ福島で誰も死亡しなかったか?原子力は非常に強力で、生命に非常に危険であると考えるだろう。しかし、そうではない!その理由は生態である。生態は、放射線から細胞を保護するため、あるいは、酸素や煙、その他DNAを攻撃するあらゆるものから保護するために、長い時をかけて進化してきた。思考力のある人間が存在する遥か前から、進化は続いている。自然の放射線を保護する身体のメカニズムは、我々の脳に何も告げることなく生じる。これは、植物と動物の細胞にも必要だったのだ。従って、放射線を受けたときの保護メカニズムに我々が気付かなくても、身体の細胞同士は互いに連絡し合い、放射線の影響を克服しようと努力する。これは、極めて良いニュースである。

Forum on Energy: 気候変動に対処する上での、原子力発電の果たす役割についてどう考えますか?

ウェード・アリソン: 私は北極圏の氷の急激な消滅と、大気中のCO2濃度の前例のない急上昇に懸念を抱いている。これは一時的変動ではなく、過去何百万年という時間を見ると、今日ほど激しく変化している時代はない。非常に憂うべき事態だ。原子力発電はCO2を排出せず、より多くの電気自動車を可能にする。我々は、食物に放射線を与えることができ、また冷凍の必要性を低くできる。原子力発電を利用して、世界の広い地域で大規模な淡水化事業を実践できる。飲料水は、世界の健康において大きな問題だ。原子力発電は、我々が無用な恐怖心を克服できれば、これらの利益を与えてくれる唯一のものになる。

Forum on Energy: 我々の進むべき方向は?

ウェード・アリソン: 我々が成すべきこと、そして最も困難なこと、それは慎重すぎる現在の法令を改正することだ。法令は、放射線に対する人々の安心感を作ってきた。60年代70年代の政治家は、選挙区で次のように言うことができた。「心配ない、皆さんが受ける放射線量を、可能な限り低く抑えます」。人々はその言葉に安心し、一票を入れる。しかし実際は、腫瘍専門医が放射線を使用してがん細胞を殺す場合、原子力発電所より遥かに強力な放射線が、健康な器官や組織に照射されるのだ。このようなことは毎日あらゆる病院で起きており、この治療で恩恵を受ける人々のことを皆知っている。高レベルの放射に親しみ、その効果も良く知っているのだ。原子力事故で人々が受ける放射線量は、医療で使用されるレベルに近い。これが、福島で誰も死亡しなかった理由であり、これからも誰も死亡しないだろうという理由だ。もちろん、数値に注意することは必要だが、これらは難しいことでなく、私の著書や数値を知る必要のある場所の基準値を示すウェブサイトで知ることができる。

現状を維持することで得られる大きな利益がある。現行の行き過ぎた安全制度の継続を頼り、これに期待する安全産業に携わる人々には数多くの仕事が存在するが、行き過ぎた安全制度のため日本で多くの生活が失われた。何の利益ももたらさない莫大な安全制度を実行するのは、原子力産業にとって非常にコストが高くつく。これらの厳しい規制がなければ、原子力技術は遥かに安価でおそらく半額で済むだろう。核廃棄物は適切かつ透明性をもって処理されなければならないが、それは鉱山や石油産業の廃棄物も同じである。これは、世界的な問題ではない。

Forum on Energy: 他に何か述べたいことは?

ウェード・アリソン: 世界は、経済成長が必要である。電子とソフトウェアブームは、息切れしている。原子力発電は雇用とチャンスを与える機会になり、原子力発電を採用した経済圏は大きな利益を得るだろう。現在これに該当するのは、ロシア、韓国、中国、そしてインドだ。現在、中国は、燃料を充填した原子炉を4年かけて建設している。米国、英国、ヨーロッパ、そして日本が参入しないのはばかげている。我々も、これらに加わる方が良い。省エネだけでは不十分、風力だけでも不十分だ。日本は、何をすべきかで明らかにジレンマに陥っている。やはり、教育による大きな後押しが必要だ。教育は、産業界や政府があまり主導してはいけない。身近な学会、医者、その他の医療の専門家が、放射線を恐れる必要のないことを人々に教えるべきだ。我々は目覚めなければならない。我々には考える頭がある。放射線について、明確かつ合理的に学ぶ必要がある。

>>著書についてもっと知る、「放射能と理性:なぜ「100ミリシーベルト」なのか」

>>放射線についての詳しい情報は、「Radiation Resource Guide」をご覧ください。