アイデアギャラリー:原子力エネルギーに関する新しい議論の開始


ヘリテージ財団のジャック・スペンサー氏

ヘリテージ財団のジャック・スペンサー氏

アイデアギャラリーとは、ゲスト著者らが原子力エネルギーに影響を及ぼす諸問題についての見通しを示すForum on Energyの一連の記事を再度収載したものである。本日のゲスト著者は、ヘリテージ財団の原子力政策担当、上級研究員のジャック・スペンサー氏である。

原子力はクリーンで安全かつ安価なエネルギー源である。現に、米国の104基の原子炉では、国で最も安価なエネルギーを生産している。しかし、規制に不備があり、核廃棄物の処理制度が損なわれているなどの重要な問題があるため、新しい米国の原発を建設することが極めて困難となっている。

このような問題があるにもかかわらず、原子力エネルギーに関する議論は、理屈の上で原子力技術を支援するかどうかという点に集中する傾向にある。この議論は重要ではあるが、見当外れなものとなっている。政治家らが原子力技術を推進させるかどうかを決断するべきではない。決断すべきはアメリカのエネルギー生産者や消費者である。政治家はその代わりに、原子力エネルギーが直面している政治的問題を解決することに専念する必要がある。そのような問題に取り組んでから、市場での手頃感や好ましさに関する疑問に答えてもよい。

2年前、ヘリテージ財団は、原子力に関して人々が抱えるいくつかの根本的な疑問に答えられるようドキュメンタリーを作成して議論の見直しを始めた。安全であるか。どのような作業があるか。核廃棄物はどうしたらよいか。その結果が、原子力エネルギーについて明らかにし、カナダのウラン採鉱やウラン粗精錬、米国の新しい建設プラントや稼働中の原発、フランスの核廃棄物処理活動内容を公開した映画、Powering Americaである。

Powering Americaの予告編をみる。

このドキュメンタリーは、毎日の生活が原子力産業と関わりのある人々の物語をまとめたものでもある。Powering Americaは、より幅広い観客に技術のことをよく知ってもらえるよう、原子力施設周辺で生活し、施設内で作業する人々の力を借りて制作されている。この映画は、スリーマイル島での事故に直接かかわっている人のほかにも、原発が近くにある地域社会でうまく生活している家族や農家の側面を描いたものである。視聴者も、米国原子力規制委員会委員長、グレゴリー・ヤツコ氏と話をし、米国の原子炉の安全が保たれるようにするために、どのような取り組みを行っているのかがわかるようになっている。当然、福島の原子炉で起きた事故の影響が残る中、この対談は特に、重要なものとなっている。

ヘリテージ財団が完全に出資したPowering Americaの目的は、原子力政策に関する議論をさらに思慮に満ちたものにすることである。この必須のエネルギー源に投げかけられる政策の疑問には未だ答えがなく、場合によっては答えが求められることもない。このドキュメンタリーの目標のひとつは、このような対話のきっかけとしての役割を果たすことである。原子力が不可解で憂慮すべきものであり続ける限り、そのような政策に関する議論が行われることはない。

ひどい政策を行うと、既存の原発が直面する課題と、米国の新たな原発の建設を妨げる障害にともに取り組むことが極めて困難となることは依然確かである。規制は予測不可能であり、核廃棄物の処理方法は政治にとらわれ、最新技術の導入はほぼ不可能である。これらの要因によって人為的にコストが上昇し、投資家らが脅かされるほか、革新が妨げられ、事業の成功を形付ける市場の力が歪んでしまう。あいにく、原子力政策を固めるためのワシントンの従来の方法は、原子力産業を細かく管理することであった。今また、コストの上昇が見積もられ、天然ガス価格が下落し、福島事故によって国民の不安が高まった。原発に未来があるかどうかについて、いくぶん疑問が浮上している。

この議論に対するヘリテージ財団の貢献は、自由市場に対するコミットメントを築くものとなっている。未来の原子力に補助金を出すか、高圧的な政府の指導で原子力を阻む代わりに、ヘリテージ財団は、市場に基づいた政策を導入することで、原子力エネルギーが発展するか衰退するかを自身で決めさせるべきと確信している。そのような方法で取り組んでいけば、民間セクターは、原子力産業が直面している主な問題を解決するための責任を負い、報酬を得ることになり、一方で、予測可能かつ効率的な監督を行うことが、連邦政府の責任となると考えられる。

ひとつ確かなことがある。改革を行わなければ、原子力の未来がこれ以上明るくなることはない。原子力政策に関して新たに議論する時が来たというのはこのためである。Powering Americaはその手始めとなっている。

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