リチャード・マイヤーズ:福島の事故から1年


Richard_Myers_web世界の原子力エネルギー産業は、産業の将来のため、より強固かつ十分に準備を整えて、2011年を切り抜けた。米国では、104基の稼働中の原子力発電所が、一連の極度の自然事象に見舞われた。

・4月にはサリー発電所を竜巻が直撃して、TVAの供給地域に打撃を与え、330人の死傷者が出た。これにより、337ヵ所の送電設備が破損し、ブラウンズフェリー原子力発電所のほとんどの外部電源が失われた。

・6月には、ミズーリ川の氾濫によりネブラスカ州にあるフォートカルフーンおよびクーパーの原子力発電所が停止した。

・8月には、ノースアンナ発電所が発電所の設計基準を上回る地震に見舞われた。

・その数日後にも、ハリケーン・アイリーンが轟音とともに東海岸に上陸し、24基の発電所に影響を及ぼした。

いずれの場合も、原子力発電所は設計どおりの機能を果たし、安全な状態を保った。発電所やその作業員は、期待通りの活躍を見せた。このような困難が生じたにもかかわらず、米国の原子力発電量は前年よりわずかに減少しただけであり、業界の平均設備容量は約89%と、依然として過去15年間の間に記録された高水準の持続的信頼性のままとなっている。

将来に目を向けてみると、ジョージア州とサウスカロライナ州の企業が30年ぶりに認可を受け、新しい原子力発電所の建設に着手している。米国の原子力産業は、行動が大きな安全性に係る利益をもたらし、われわれの主な目的は燃料損傷を防止して格納容器の完全性を確保することであるということを念頭に置きながら、福島事故から学んだ教訓を組み込むために積極的に動いている。

9月11日のテロ攻撃の後、米国の原子力事業者は発電所が大規模な火事や爆発に見舞われ、重要設備が機能しなくなった場合のシナリオを想定した。このようなシナリオでは、設備またはシステムが影響を受けるということを正確に予測することが不可能である。このことから米国の原子力産業は、ほとんどすべてのものが失われたことを想定して、原子炉の冷却に必要なことに重点を置き、革新的な取り組みを行った。われわれは発電機やポンプなどの可搬式設備を購入した。これらの設備は原子炉から離れた場所に保管され、爆発、航空機衝突または火事の位置に関係なく対応できるよう使用される。9月11日の取り組みによって、米国の原子力エネルギー産業は、10年の先手を打って、福島でのシナリオのような極度の予期せぬ事象への取り組みを始めた。

日本から学んだ主な教訓は、複数の原子炉で同時に大惨事に対処できるよう備えなければならないということである。福島事故に対する最初の備えとして、事業者は可搬式設備をさらに購入してこれを管理し、施設とは別の場所に設置する予定であり、これ以外にも追加の設備や備品の足場を施設から離れた場所に事前に設ける予定である。米国では原子力エネルギーに対する一般市民の認識が回復しつつあり、福島事故に対する政治的な対応が評価され、信頼できるものとなっている。

いくつかの注目すべき例外を除いて、世界中の対応は同じ経過を辿っている。中国やインドのような発展途上国では、原子力発電所の建設に対する成長が今もなお著しい。世界中には、建設中の新しい原子炉が65基あり、これとは別に160基が発注済みであるか、計画の段階にある。原子力エネルギーを段階的に廃止するというドイツの決定や、原子力発電所の建設を行わないというイタリアの決定が、マスコミで大きく扱われている傾向にある。ドイツやイタリアはともにそのような決定をしているが、ポーランド、チェコ共和国、フィンランドおよびイギリスは、原子力エネルギーの開発を進めている。

―リチャード・マイヤーズ著、原子力エネルギー協会、政策開発、計画および供給国に関するプログラム担当副議長

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